バックパックは、荷物を効率よく収納し、快適に背負うための様々なパーツで構成されています。 前面には、収納のメインとなるメインコンパートメントや、底部から荷物を取り出しやすいサブコンパートメントがあります。また、雨水の浸入を防ぎ、小物収納に便利な雨ぶたなども備わっています。背面側には、荷重を分散させる背面パッド、パックを背負うためのショルダーハーネス、そして腰で荷重を受け止めて歩行時の揺れを防ぐウエストハーネスなどがあり、これらが背負い心地や体への負担に大きく影響します。
旅のスタイルに応じたサイズとデザイン
バックパックの容量はリットル(ℓ)で表され、目的や宿泊日数に合わせて選びます。
- 15ℓ~30ℓ(小型)
日帰りハイキングや小旅行に最適です。
- 30ℓ~50ℓ(中型)
2泊~4泊程度の宿泊や、寝具を持参する無人小屋泊などに適した使い勝手の良いサイズです。
- 50ℓ以上(大型)
テントや寝袋が必要なテント泊や、1週間以上の長期旅行に向いています。ただし、少ない荷物を入れると重心が安定せず背負いづらくなるため、小旅行との兼用は困難です。また、デザインも多様化しており、都市部向けの3ウェイバックや、軽量化と通気性を重視した自転車モデルやトレイルランニングモデル、サブバッグとして便利な折りたたみ式のパッカブルバッグなど、アクティビティに応じた選択が可能です。
体への合わせ方(フィッティング)
バックパックの機能を最大限に生かすには、自分の背面長(首の後ろの一番出っ張った骨から、腰骨の上端までの長さ)に合ったサイズを選ぶことが不可欠です。
1.すべてのハーネスを緩めた状態で背負い、ウエストハーネスを腰骨の位置に合わせて締める。荷重の大部分は腰で受け止めます。
2.ショルダーストラップを引き、ショルダーハーネスを肩に密着させる。
3.トップスタビライザーを引き、パックを体に密着させて荷重を肩や背中全体に分散させる。
4.最後にチェストストラップを鎖骨の5cmほど下で締め、歩行時のパックの揺れを防ぐ。
パッキング(収納)の基本と応用
パッキングの最重要ポイントは「重心のコントロール」です。重いものは背中に近い上部に入れ、軽いものは下部や外側に配置するのが基本です。これにより、重心が安定し後ろに引っ張られる感覚が軽減されます。また、歩行時に体が振られないよう左右のバランスを均等にし、よく使うものは上部に入れるのがコツです。防水対策としては、外側にレインカバーを被せるだけでなく、内部の荷物を防水性のインナーバッグで丸ごと包むとより確実です。さらに、荷物をコンパクトにするために、不要な包装箱をあらかじめ捨てる、衣類やシュラフをコンプレッションバッグで圧縮する、用途別にスタッフバッグを色分けして中身を確認しやすくするなどの応用技術も非常に有効です。
カスタマイズとメンテナンス
使い勝手を向上させるため、長すぎる不要なストラップをカットして端を火で炙ってほつれ止めをしたり、ファスナーのリングに紐を結びつけて開閉しやすくするカスタマイズが推奨されています。また、収納が足りない場合は別売りの小型バッグをハーネスに追加することも可能です。長持ちさせるためのメンテナンスとしては、保管時は必ず荷物をすべて出して空にすることが大切です(荷物の重みでパックが変形・劣化するため)。ひどい汚れがある場合は、防水コーティングへのダメージを避けるため丸洗いはせず、中性洗剤を含ませたブラシなどで部分洗いをし、生地の劣化を防ぐために風通しの良い日陰でしっかりと乾燥させてください。
背面長の正しい測り方
背面長の正しい測り方は、首の後ろのいちばん飛び出た骨(第7頸椎)から、腰骨の上端までを、背中の湾曲に沿って測るのが正しい方法です。この自分の背面長と、バックパックの背面の長さが合うようにサイズを選ぶことで、バックパックの機能を最大限に生かすことができます。
バックパッキングにおける旅の基本装備は、「衣・食・住・歩・学」の要素から成り立ち、どのような旅をするかというスタイルによって選ぶべき道具が変わってきます。
歩(シューズとソックス)
足元は体と荷物のすべてを支えるため非常に重要です。
- シューズ
悪路を歩いたり重い荷物を背負う場合は、足首をしっかり保護して捻挫を防ぐハイカットが最適です。一方、荷物が軽く歩きやすさを重視する場合はローカット、両者の中間の性能を求めるならミッドカットと、目的に応じて高さを選びます。
- ソックスとインソール
靴の性能を引き出すためにソックスも重要です。クッション性が高く、汗を吸い出して快適に保つウールソックスや、足への圧力を調整して疲労を軽減する高機能ソックスが推奨されます。また、足へのフィット感を高めるインソールの活用も効果的です。
衣(ウェアと雨具)
- レイヤード(重ね着)の基本
状況に応じて服を着脱し、こまめに体温調節を行うことが体力の消耗を防ぐ秘訣です。汗を吸収・速乾するベースレイヤー(肌着)、保温のためのミッドレイヤー(中間着)、雨風を防ぐアウターレイヤー(外着)の3層構造が基本となります。
- 風雨対策
雨天に備え、ゴアテックスに代表される防水透湿性素材(雨は防ぎつつ内部の蒸れは逃がす素材)を使用したレインウェアやオールウェザーシェルは必須です。あわせて、靴の中への水の浸入を防ぐゲイター(泥よけ)も役立ちます。
- 高機能タイツ
脚の血流を整えて運動性を高めるタイプや、関節をテーピングの原理でサポートして疲労やケガを防ぐタイプがあり、快適な歩行を助けてくれます。
食(食材と調理器具)
- 食材
軽く、長期保存ができ、調理が簡単なものが適しています。お湯を注ぐだけのアルファ米やフリーズドライ、乾麺などが代表的です。歩きながらエネルギー補給ができるチョコやナッツなどの行動食も用意します。
- 調理器具と水
火器(ストーブ)は、扱いやすいガス、寒冷地に強いガソリン、シンプルな構造のアルコールなどの燃料別に分かれており、これとコッヘル(小型調理器具)を組み合わせて持参します。水筒はプラスチックやコンパクトになるソフトボトルが人気で、自然の水を飲むための携帯用浄水器もあると便利です。
住(テントと寝具)
- テント
ペグ(杭)が打てない硬い地面でもポールの張力で立つ自立式テントが扱いやすく安心です。結露しにくい二重壁構造のダブルウォールと、軽量で設営が早いシングルウォールがあります。
- シュラフ(寝袋)とマット
シュラフの中綿は、軽量で暖かい「ダウン」か、水濡れに強く手入れがしやすい「化繊」に大別されます。また、地面からの冷気を防ぎ寝心地を良くするために、発泡マットや空気で膨らませるエアーマットを必ず下に敷いて使用します。
学(ウルトラライトという考え方)
より自然に近づくため、あるいは長距離を歩くために荷物を極力軽くする「ウルトラライト」という思想も装備選びの参考になります。水や食料などの消費材とバックパック本体を除いた「ベースウェイト」を4~5kg、全体を10kg以下に抑えることを目指します。単にモノを減らすだけでなく、「ダウンジャケットやフリースを着たまま寝ることで、薄くて軽いシュラフで済ませる」といったように、異なる装備の機能を補い合わせる工夫が大切です
「歩いた距離が長いほど哲人に近付ける」と言われるように、バックパッキングという大いなる世界の扉が開きました。自然の中を歩き、安全で充実した旅にするための実践的なテクニック(ナビゲーション、歩行術、トレッキングポールの活用)をまとめました。。
1.安心して旅するためのナビゲーションと防犯
トレイルの道しるべとなるのは地図とコンパスです。地形が把握しやすい国土地理院の「2万5千分の1地形図」を基本とし、コースタイムや水場が記載されている昭文社の「山と高原地図」を併用するのがベストです。GPSは便利ですが、まずはコンパスの補助的な位置づけとして利用するのが理想です。また、大都市のゲストハウスなどで相部屋を利用する場合は、荷物を守る防犯ネットがあると安心です。
2.歩く前と後のストレッチ
長距離を歩く旅では、ケガの予防と疲労回復のためにストレッチが欠かせません。
- 下半身
ふくらはぎ、太もも(大腿筋)、股関節をそれぞれ15~20秒ほどかけてじっくり伸ばします。
- 上半身
重いバックパックを背負うため、木などを利用して肩甲骨を開き、背中と肩の筋肉も入念にほぐしましょう。
3.路面の変化に応じた歩き方
自然のトレイルでは、足元の状況に合わせて歩き方を変える必要があります。
- 土や岩の道
木の根や浮き石は滑りやすいので、踏まないように注意します。
- 木道
濡れている時は岩場以上に滑るため、擦り足で慎重に進みます。
- 鎖場と梯子
ポールはバックパックに収納して両手を空け、鎖やロープに全体重をかけないよう慎重に登り下りします。
- アスファルト
実は山道以上に足に負担がかかるため、体重をかけすぎないように歩くのがコツです。
4.トレッキングポールの効果的な活用術
足の負担を大幅に軽減し、歩行の安定感を増すトレッキングポールはぜひ活用したいアイテムです。ポールの先端のキャップは、木道や木の根を傷つけないように付けるのがマナーですが、土や岩場では外した方が確実に地面をとらえられます。
- 平地での基本
っすぐ立った時に腕が直角になるように長さを調整します。ストラップの下から手首を通してグリップを握り、踏み出した足より手前に突くことで、体のブレや前のめりを防ぎます。
- 上り坂
平地よりも5~10cm短く調整します。つま先立ちになると小さな筋肉(ふくらはぎ)を使い疲労しやすいため、「ベタ足」で着地し、太もも(大腿四頭筋)やお尻(大臀筋)の大きな筋肉を意識して歩くのが疲れにくいコツです。
- 下り坂
数歩先の地面を突くため、平地よりも5~10cm長く調整します。急な下りではグリップの頭を上から包むように握ると効果的です。前傾姿勢にならず、軸足を軽く曲げて着地の衝撃を減らしながら慎重に下りましょう。ポールを使わない場合も、体を垂直に保つイメージが大切です。
- アスファルト
実は山道以上に足に負担がかかるため、体重をかけすぎないように歩くのがコツです。